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用などさまざまな中間処理をした後、埋め立て処分する。一般廃棄物は公共団体の責任で処理処分されることになっており、現在ではそのほとんどが焼却処理された後、その残さが埋め立て処分される。廃棄物以外で大きな量になるものに土木工事などで生じる残土と、海の航路保守などで生じる浚渫土砂とがある。埋め立て処分に関しては、これらも廃棄物と同様に問題になる。
現在大阪湾で広域処分場として廃棄物の埋め立て処分が進められているフェニックス計画の埋め位ての内容物はTable 1のようである。残土や浚渫土砂がかなりの量を占めていることがわかる。また一般廃棄物は全体の10%程度であり、家庭系ゴミはさらにその一部であるから、上述容器包装リサイクル法がうまく機能したとしてむ、埋め立て処分減量化への効果はほとんど期待できないだろう。火際、大阪湾ベイエリアにおける自治体の推定によればTable 2のように、今後も廃棄物は大きく増大すると予側されている。
廃棄物の埋め立て処分は陸域でも行われているが、現在進められている処分地は満杯に近い。しかし新たな処分場確保はもう困難な状況にきており、加えて多くは山間の源流域にあるから、環境破壊の面でも問題は小さくない。陸域処分が困難になってきていることもあって大阪湾が埋め立て処分場の対象とされ、Table 1にも示したように新たなフェニックス計画が進められている。海面埋め立ては、しかし護岸工事などに大きな費用を要し、このため現在はその費用を、造成された土地を売却したり、締済活動を行うことで、つまり理め立て地を発的に活用することで調達する方式が取られている。この方式も廃棄物処分とともに海面開発が同時的に進行する理由の1つではなかろうか。

5 大阪湾埋め立て開発の方向転換のために

大阪湾ベイエリアでは産業経済活動、とりわけ交通輸送施設のための埋め立て要請が依然強い。また廃棄物は現状でもその処理処分は問題になっているが、将来ますます増えると予測されており、大阪湾を埋め立て処分場に利用しようとする動機は強い。そして現在では、財政上の理由もあって、産業開発と廃棄物処分の両目的が混然。体となって進められている。すでに埋め立て海域は、海域環境保全上重要と思われるA海域にまで広がりつつあるが、この強い動機の下では大阪湾の埋め、立て開発は止まりそうにはない。
一方海面埋め立てに対する環境アセスメントは、その影響調査の内容も、DOへの影響でみたように、現状では決して十分ではない。さらに各事業ごとにしか行われないから、個別プロジェクトが進められていったときに大阪湾ベイエリア全体としてどんなことになるのか調べられない、という問題点も有する。結果として現状の環境アセスメントでは、大阪湾各地の埋め立て開発に対して、環境保全の面から十分な検討は行いにくくなっている。筆者らは先に大気環境の動向について分析し、大阪湾ベイエリア全体としての環境保全戦略が必要であると指摘したが7)、本報で述べたことから、同様のことが水環境についても指摘されよう。
以下大阪湾の埋め、立て開発をできるだけ抑制するために、廃棄物問題とその埋め立て処分、環境アセスメントなどについていくつか提案したい。
(1)瀬戸内法に従い、大阪湾の埋め立ては抑制し、大阪湾の環境の再生と保全を目指すことを基本方針とする。
(2)環境アセスメントの方法を充実強化する。
(3)大阪湾の埋め位てに関してつぎの方策をとる。
?廃棄物埋め立てに限定する。
?埋め位ての護岸構造や工法を、大阪湾の環境浄化に資するようなものとする。
?埋め、立て地を経済政業活動に利用する事は止め、緑地、森林など自然や環境再生のために利用する。
?埋め、立て処分費用は廃棄物発生者負担の原則に則り、護岸費用なども含め、すべて発生者負担とする。
(4)廃棄物の減量化・安分化政策
?産業系・事業系廃棄物の発生・処理・処分の全過程のモニタリング体制を整備する。
?発生者負担の原則に基づき、廃棄物処理処分費用の発生者負例を徹底し、その具体策を立てる。
(5)港湾など交通輸送施設の開発
海上輸送施設などは、バージ方式、浮体方式など埋め立て地によらない方法を検討する。

[参考文献]

1)大阪府立水産試験場事業報告および大阪府環境白書、各年度版、
2)神戸市環境局「環境水質」平成6年版(1995)
3)柳哲雄、沿岸海洋研究ノート、26巻2号(1989)
4)城久、沿岸海洋研究ノート、26巻2号(1989)
5)中村、西村、第35回海岸工学講演論文集、(1988)
6)たとえば大阪湾ベイエリア開発推進機構、「大阪湾ベイエリア」、(1996)
7)西川、松本、第4回テクノオーシャン論文集、(1994)
8)大阪湾広域臨海環境整備センター資料(1995)
9)大阪湾圏域広域処理場整備基本証画の主な変更点、(1995)

 

 

 

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